本記事では、あなたが、保険をきちんと選べるように、そのうえで節約できるようにするための基本知識だけをまとめた。
ここで触れた内容を中心に、次項以降の「保険の節約」記事は執筆していく。
そのため、すでに保険の基礎知識があるという方はさっそく「保険の節約」カテゴリーに進んでもらっても構わない。
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では、保険の基礎知識、保険料の仕組みについて解説していく。
民間保険とは”保険会社”の商品
まず民間の保険について紹介しておこう。
民間の保険とは、いわゆる保険会社などが販売している商品のことだ。(それに対して、国が管理・運営している保険を公的保険とも呼ぶ)
民間保険は以下の
- 生命保険(生死に関わる保障)
- 損害保険(モノに関わる損害を保障)
- 第三分野の保険(医療や病気、介護など、上2つに当てはまらない保障)
と、3種類に分かれており、それぞれ会社によって取り扱える範囲が決まっている。
「〇〇生命」と付く保険会社では、生命保険・第三分野の保険、を取り扱い可能。
「〇〇損保」「〇〇海上保険」などと付く保険会社では、損害保険・第三分野の保険を取り扱い可能である。
さらに保険は、お伝えした「生命保険」「損害保険」「第三分野の保険」から、それぞれ、さらに種類が分かれる。
保険それぞれの概要と種類
生命保険の概要と種類
生命保険とは、その名の通り「生命=生きる・死ぬ」ことについての保険だ。
基本的に、支払われる保障金額が、「契約した際に定めたもの=定額払い」であることが特徴である。
生命保険は、おおきく3つの形に分かれる。一般社団法人「生命保険協会」によると、
- 死亡保険
- 生存保険
- 生死混合保険
と分かれて(引用:生命保険協会「STEP. 5 生命保険の基本型・構成」)おり、それぞれ
- 死亡保険
→編集注:亡くなった場合に保障。定めた期間内で保障する「定期保険」と、解約 or 死亡まで保障される「終身保険」がある - 生存保険
→保険期間の満期まで生存していた場合に保障。年金保険などが該当 - 生死混合保険
→亡くなった場合の保障と、保険期間満期まで生存していた場合に満期保険金が支払われる。養老保険などが該当
といったイメージだ。
インターネット上では「生命保険は4種類」と書いているメディアも散見されたが、内容を確認してみると
- 死亡保険
- 生存保険
- 生死混合保険
- 医療保険・介護保険
となっていた。
違いを解説すると、「4.医療保険・介護保険」は、これは第三分野の保険とも言えるものである。生命保険会社のホームページなどでも同様に散見されたため、自社で対応している保険という意味で、紹介していたと予想される。
ちなみに、生命保険は便宜上「亡くなった場合」と記載したが、「高度障害を負った場合」であっても支払われることが多い。
なお、保険業法では
人の生存又は死亡(当該人の余命が一定の期間以内であると医師により診断された身体の状態を含む。以下この項及び次項において同じ。)に関し、一定額の保険金を支払うことを約し、保険料を収受する保険
とされている。
損害保険の概要と種類
損害保険とは、何かしらの損害を受けた際に保障が支払われる保険のことで、その「損害金額に応じた金額が支払われる=実損払い」が多いことが特徴である。
基本的には「モノに対する保険」と考えてもいいかもしれない。
損害保険の種類としては、中小企業庁掲載の資料「損害保険の活用等における現状と課題について」では、以下
- 火災保険
(→編集注:家財保険や地震保険などが該当) - 自動車保険
- 自動車賠償責任保険
- 傷害保険
(→編集注:交通事故傷害保険、旅行傷害保険などが該当) - 新種保険
- 海上保険、運送保険
が挙げられている。これはあくまで企業向けの資料のため、個人では後半の「新種保険」や「海上保険、運送保険」はあまり気にしなくてもよいだろう。
なお保険業法では
一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補することを約し、保険料を収受する保険
とされている。
第三分野の保険の概要と種類
第三分野の保険とは、ここまでに紹介した「生命保険(生死に関わる保障)」「損害保険(モノに関わる損害の保障)」に当てはまらないものを指す。
ざっくり説明するとケガや病気に関する保険と言え、具体的には
- 医療保険
- がん保険
- 介護保険
- 傷害保険
などが挙げられる。
傷害保険が重複するが、ここの線引きは難しいよう(例:交通事故では、車も人も「損害」を受け、「ケガなどの治療」をしなければならず、「生死に関わる」とも言える)だ。
なお、保険業法では
次に掲げる事由に関し、一定額の保険金を支払うこと又はこれらによって生ずることのある当該人の損害をてん補することを約し、保険料を収受する保険
イ 人が疾病にかかったこと。
ロ 傷害を受けたこと又は疾病にかかったことを原因とする人の状態
ハ 傷害を受けたことを直接の原因とする人の死亡
ニ イ又はロに掲げるものに類するものとして内閣府令で定めるもの(人の死亡を除く。)
ホ イ、ロ又はニに掲げるものに関し、治療(治療に類する行為として内閣府令で定めるものを含む。)を受けたこと。
とされている。
もう一方で、金融審議会金融分科会第二部会による「保険法改正への対応について(平成20年1月31日)」の報告の中では
保険業法においては、傷害・疾病保険契約(定額給付方式、損害てん補方式)、傷害死亡給付契約を第三分野として規定し、疾病死亡給付契約を生命保険として規定している。
と説明されている。
ちなみにだが、確定申告や年末調整で目にする「介護医療保険料」も、一部はここに当てはまり、定義としては
疾病又は身体の傷害その他これらに類する事由に基因して保険金が支払われる保険契約のうち、医療費等支払事由に基因して保険金等が支払われるもの
とされている。
保険の購入について
保険を購入できる場所は、ざっとあげても
- 保険販売員(営業)
- 保険代理店
- 保険相談窓口
- ネット
とある。
それぞれ特徴を説明しておこう。
保険販売員(営業)
保険の販売員とは、保険を販売する営業部員のことだ。
ほかに「保険外交員」「保険外務員」「セールスレディ」と呼ばれることもある。
雇用形態は、正社員、契約社員、業務委託契約の3つで、所属先は、保険会社と代理店だ。
保険会社に所属している販売員は、所属先(自社)の保険商品を取り扱う。
代理店に所属している場合は、その代理店が取り扱う保険商品を紹介できることになる(つまり複数社の保険の紹介をしていることもある、代理店については詳細は後述する)。
報酬形態はいずれにしても、固定給+歩合制が基本で、固定給の相場は10万円前後とのこと。
歩合制については、いくらくらい貰えるのか、はっきりとした数字はさすがにわからない。おそらく保険会社や個々人の契約、販売した商品によっても分かれているが、インターネット上で散見されたのは「月々に支払う保険料の20%〜50%」であった。
ちなみに、保険商品を販売するためには
- 生命保険一般課程試験
という試験に合格した資格が必要で、その上で国に登録することが決まりとなっている。
さらに、取り扱う保険商品の範囲を広げるためには
- 変額保険販売資格試験
- 損害保険一般試験
といった、試験にも合格する必要がある。
保険代理店
保険の代理店とは、保険会社から保険商品の取り扱いの委託を受けた事業者を指す。
具体的には保険商品の販売や、変更・解約などの手続き、保障を受ける際の手伝いなども行う。
取り扱う保険商品は代理店によって異なり、単独の保険会社に限らず、複数の保険会社の商品を取り扱うところもある(単独の保険会社商品を取り扱う代理店を「専属」、複数社のものを取り扱う代理店を「乗合」と呼ぶ)。
保険代理店は、その売上を保険会社からの販売代行手数料で確保している。
この販売代行手数料がいくらになるのか、さすがにはっきりとした数字は不明だが、筆者が調べた限りでは、契約者が支払う保険料の10~40%ほどに相当するそうだ。(パーセンテージの差は、保険料金額や保障料金額、販売量や顧客満足度などが影響するよう)
ただし、その10~40%が、代理店に搾取されているというわけではない。
代理店で契約した保険商品と、保険会社で直接契約した保険商品で、同じ商品であれば支払う保険料は同じだそうだ。
基本的に保険という商品は、同じ保険会社の同じ商品であれば、保険会社の営業員、保険ショップ、インターネットなど、どこで加入しても保険料は同じ金額となり、普通の商品のようなお店による違いはありません。
しかし、一部ではこんな声も散見された。
実は、同じパンフレット、同じ商品名でも、経由する代理店によって、契約条件やスペックが違うことがあります。
同じ商品名でも、多少の差異が出る場合があるという。この点については、筆者も少し調べておこうと思う。
保険相談窓口
保険相談窓口とは、いわゆる「ほけんの窓口」や「保険クリニック」に代表される、店舗型の保険ショップだ。
特徴は
- 無料で保険の相談ができること
- 販売員ではなく、ファイナンシャルプランナーが対応すること
- 複数の保険会社の商品が比較できること
といった点があげられる。
そのまま契約を行うことも可能(店舗に資格取得者がいる場合)で、事実上”乗合の保険代理店”ともいえるだろう。
保険相談窓口は、その売上を代理店同様、保険会社からの販売代行手数料で確保している。
そのため「公平中立な立場に見えて、実はそうではないんじゃないか」という意見も散見されている。(例えばだが、業界最大手の「ほけんの窓口グループ」の第3位の株主は住友生命保険であるなど、多くの保険相談窓口は、保険会社と資本関係にある)
ネット
保険は、ネットでも契約できる。
ネット契約の保険は「ダイレクト型」とも呼ばれており、自分で探し、自分でプランを組み立て、自分で申し込み、契約する。いざ保障を受ける際にも、自分で保険会社に請求する必要があるのが特徴だ。
ネット保険は、ネット限定商品などもあり、その場合、保険料が割安になることが期待される。
保険料の内訳と決まり方
月々に支払う保険料は、おおきく
- 純保険料
- 付加保険料
に分けることができる。
純保険料とは、将来の保険金、およびそのための資産運用に充てられるお金のことだ。これは生命保険の場合であれば
「予定死亡率(契約期間中に亡くなる確率)」
「予定利率(運用で得られるであろうリターン予想、金融庁の”標準利率”に連動する傾向がある)」
をもとに計算される。
付加保険料とは、保険会社の人件費や広告販促費、利益などに充てられるお金のことだ。これは
「予定事業費率(事業に掛かるであろう経費の予定割合)」
をもとに計算される。
純保険料と付加保険料のそれぞれの比率は、各保険会社・保険商品ごとに異なるが、業界で唯一、内訳を開示しているライフネット生命保険株式会社によると、
30代男性で定期死亡保険「かぞくへの保険」、保険期間10年、保険金額1000万円の場合、
保険料は月額1068円で、
- 純保険料
→667円 - 付加保険料
→401円
→付加保険料率は 401円/1068円 =約37%
30代男性で定期死亡保険「かぞくへの保険」、保険期間10年、保険金額5000万円の場合、
保険料は月額4340円で、
- 純保険料
→3333円 - 付加保険料
→1007円
→付加保険料率は 1007円/4340円 =約23%
となっている。
ちなみに、「予定死亡率」「予定利率」「予定事業費率」は、あくまで予定であり、大きく外れることもある。そこで発生した「外れ値=差」のことを
- 死差益・死差損
- 利差益・利差損
- 費差益・費差損
とも呼ぶ。
もちろん保険会社は「損」は出したくないので、予定死亡率を高めに、予定利率を低めに、予定事業費率を高めに設定する傾向があるといい、ここで出た「益」を「剰余金」として、配当に回すこともあるそうだ。
民間保険・保険料に関する最新のニュース
ここでは、保険の節約に関する最新ニュースの記事を取り上げている。本記事も随時更新するように務めるが、興味のあるものがあれば、ぜひ読んでみてもらいたい。
まとめ
本記事では、あくまで保険をきちんと選べるように、そのうえで節約できるようにするための基本知識だけをまとめた。
ここからが本番と思って、次項以降の「保険の節約」記事を読んでいってもらいたい。
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